VMD
概要
- イリノイ大学で開発された分子構造可視化ツール
- 分子動力学シミュレーション分野では有名な可視化ツール
- トラジェクトリ (分子の軌跡) や構造内の水素結合の可視化ができる
- 操作が少々独特
- ドキュメントも古かったり、日本語のものが少なかったり…。
操作
ショートカットキー
| キー | 挙動 | 備考 |
|---|---|---|
| r | 回転(rotate)モードに変更 | マウスのドラッグで分子を3次元的に回転させる |
| t | 水平移動(translate)モードに変更 | マウスのドラッグで分子を水平移動させる |
| s | 拡大縮小(scale)モードに変更 | マウスのドラッグで表示領域を拡大縮小させる |
| c | 回転の中央に設定する | 原子をクリックすると、回転モード時にその原子がある座標を中心に回転させる (原子が移動しても原子を追跡するわけではない) |
| p | pickモードに変更 | コンソール画面にクリックした原子の情報を表示する |
| . or > | アニメーションの再生 | |
| , or < | アニメーションの逆再生 | |
| / or ? | アニメーションの停止 | |
- 起動時は、回転モードになっている
- 参考サイト: Hot Keys
内部コマンド
| コマンド | 挙動 | 例 |
|---|---|---|
| mol new MOL | 座標ファイル MOL を読み込む | mol new foo.nc |
| mol new MOL first FRAME1 last FRAME2 | 座標ファイル MOL から FRAME1〜FRAME2 を読み込む | mol new foo.nc first 50 last 100 |
| mol addfile TOPOL | 直前のファイルに対し、分子のトポロジー TOPOL を読み込む | mol addfile foo.prmtop |
| play VMD | 状態ファイル VMD を読み込む | play foo.vmd |
| save_state VMD | 状態ファイル VMD を保存する | save_state foo.vmd |
| color Display Background COLOR | 背景色を変更する | color Display Background white |
| pbc box [-color black -width 1] | セルを表示する | |
| quit | VMD を終了する | |
- 参考サイト:
分子の表示の変更
Graphics→Representaions…でGraphic Representationsウィンドウを起動する。- 新たに描画対象を指定する場合は、
Create Repボタンをクリックする (編集する場合はスキップする)。 Style Color Selectionと書かれた項目から編集対象のスタイルを選択する。Selected Atomsの下の欄に、対象とする原子・分子を指定する (下のタブのSelections内の項目をダブルクリックしていくだけでも何とかなるかも)。- よく使う selection:
- 一般名:
protein: 一般的なアミノ酸nucleic: 一般的な核酸water: 水分子
- 特定の条件を指定:
name X:Xという原子名 (元素名でない) を持つ原子resname X:Xという残基名をもつ残基resid N:N番目の残基 (1 から始まる番号)name “H.*”: 水素原子 (ダブルクォーテーションで囲まれた内部は正規表現での指定が可能)
- 論理演算子
and: 条件を AND でつなぐor: 条件を OR でつなぐnot: 条件を否定する
- 距離指定
within D of TARGET:TARGETに指定した条件の原子を指定し、そこからDÅ 以内に存在する原子same fragment as (within D of TARGET):TARGETに指定した条件の原子を指定し、そこからDÅ 以内に存在する残基
- 参考サイト
- 条件を入力したら、Enter を押して確定する。
Draw styleタブで、Coloring MethodとDrawing Method、Materialを指定する。- よく使うスタイル (
Coloring Method)Name: 原子ごとに定義された色ColorID: 任意の色
- よく使うスタイル (
Drawing Method)Lines: ワイヤー表示Hbonds: 水素結合表示VDW: ファンデルワールス半径を考慮した球のつながり表示CPK: Ball&Stick モデルLicorice: スティック表示NewRibbons: タンパク質やアミノ酸の骨格を滑らかなチューブで表示したり、塩基に面を張ったりする表示 (厚め)Ribbons:NewRibbonsに似ているが、ペラペラのチューブで表示Surf: ファンデルワールス半径を考慮した滑らかな面で表示 (ただし、面の演算に時間がかかるのでトラジェクトリ (動画) 表示をすると高コスト)QuickSurf:Surfの簡易版
Tips
周期境界ボックスを表示する
- シンプルなコマンド
> pbc box -on
- 消したい場合は
-onを-offにする。
- オプションをフルに設定する
> pbc box -color black -width 1
奥の原子・分子が暗い or 霧がかかる
ズームするとポリゴンの内部が見える
- ズームすると、ポリゴンの中身が見える場合、
Display→Display Settings…で、Screen Hgtを1.0にする。Display→Display Settings…で、Near Clipを下げてもある程度緩和できるが、ズームすると内部が見えてしまうので上記の方法がおすすめ。
回転の中心設定
- ビューア画面上で c を入力 (中心選択モード)
- 中心に据えたい原子をクリック
- ちなみに r が回転モード、t が平行移動モード
http://www.life.umd.edu/biology/sukharevlab/download/vmd_scripts/vmd_enhanced_startup_file.htm
一時的に特定条件の原子を消す (スタイルを無効化する)
Graphics→Graphical Representationsで表示したGraphical RepresentationsでStyle Color Selection内のスタイルをダブルクリックして赤字にする。
カウンターイオンの表示 (representations) 方法
- AMBER のパラメータファイルでは、カウンターイオンは「元素名 + “+“」や「元素名 + ”-“」で表記されている (例. K+、Cl-)
- カウンターイオンの表示を、VMD の Graphical Representations の
Selected Atomsにそのまま入力すると、The atom selection you typed could not be understood.(syntax error) とエラーが出て選択できない (アニオンは問題ないが…) - その場合は、その
Selected Atomsで元素名をシングルクォーテーションで囲んでしまえばいい (ダブルクォーテーションだと Syntax error になる)
例. K+ の場合、resname 'K+'type 'K+'
分子間水素結合の表示
- selected atoms が resname xxx だと、xxx の分子内水素結合しか表示されない
- 分子間水素結合を表示するには、
- selected atoms: resname xxx or resname yyy
- draw style: hbond
原子間距離の表示
- Mouse → Label → Bonds で距離を知りたい原子をクリックする
- ラベルが邪魔な時は、Mouse → Label → Atoms にして、消したいラベルの原子をクリックする
- 距離をプロットする場合は、Graphics → Labels… から、Bonds を選択して、Graph タブの Graph… をクリックする
断面図の作成
- 座標及びトポロジーファイルを読み込んで分子を表示する。
Extensions→VisualizationClipping Plane Toolを選択する。- 断面の切断面を側面から見る位置に分子を回転させる。
- その位置で、起動した
Clip ToolのSettings内の 2 項目 (Normal follows viewとOrigin follows centerをチェックを入れて、再度チェックを外す)Normal follow view: 現在のビューに合わせて座標を設定する。Origin follows center: 現在のビューに合わせて、座標中心を設定する。
Edit Clipping Planes内の数字 (断面番号) のいずれかをクリックする。Activeをクリックする。Distanceを設定する。- どれくらい切断させたかを確認するには、分子のビューを上下左右のいずれか 90 度回転させると良い。
- 断面で囲むために、別の切断番号をクリックする。
Activeをクリックする。Normalの項目にあるflipボタンをクリックする。Distanceを設定する (スクロールバーの進める方向は 7 と同じ方向)。
- 断面状態は、
File→Visualization State…で保存可能だが、再度Clip Toolを起動するとリセットされる。
パワーポイントで再生できる動画作成方法
- 分子パラメータやトラジェクトリを読み込んだ状態にする
- Extensions → Visualization → Movie Maker を選択
- メニューバーの Movie Settings で、Trajectory を選択
- メニューバーの Format にて、「MPEG-1 (ppm to mpeg)」を選択
- Set working directory を変更<br>(ここで指定したディレクトリに動画作成のためのテンポラリファイルと動画が作成される)
- Name of movie に動画のタイトルを入力<br>(拡張子の前のファイル名になる)
- 可能ならば、Movie duration を設定
- Make Movie をクリック
Windows Movie Maker を使う方法
- 出力された動画を Windows のムービーメーカーに読み込ませる
- メニューで「ムービーの保存」→「カスタム設定の作成」を選択
- 名前にプロファイル名を付ける
- サイズ: 720×576
- ビットレート: 1250 kbps
- フレームレート: 25 fps
- オーディオなし
- 最後に保存ボタンを押す
- もう一度、「ムービーを保存」→「先ほど保存したプロファイル」で、保存ダイアログが表示されるので、ファイルの種類を「Windows Media ビデオファイル」にして保存
transmagedon を使う方法
- 動画を選択
- 以下の設定にする
- Presets: No Presets
- Output Format: MPEG PS or MPEG1-Video
- Choose Audio Codec:
- Choose Video Codec: H.264
- Rotate the video image if needed:
- Transcode ボタンを押す
ffmpeg, avconv を使う方法
$ ffmpeg -i INPUT -s 720x576 -r 29 -b:v 1250k -c:v wmv2 OUTPUT.wmv
-i 入力ファイル-s サイズ-r フレームレート (fps)-b:v ビットレート-c:v ビデオコーデック-c:a オーディオコーデック-vf crop=W:H:X:Y(不要な部分をカット (トリミング) するために使う; W: width, H: height)
背景色を透明にした画像を作成する
- POV-Ray をインストールする。
$ sudo apt install povray
- VMD で画像にしたい状態にする。
File→Render..を選択する。- File Render Controls ウィンドウ内の設定を以下の値にする。
Render the current scene using:POV-Ray 3.6Filename: 画像パスRender Command:/usr/bin/povray +W%w +H%h -I%s -O%s.png +D +X +A +FN +UA
Start Renderingボタンをクリックする。
インストールしても動かせない
rlwrap: No matchと出たら、以下のページを参考にする- rlwrap の
set vmdprefixcmdがうまく処理できていないらしい…。